ビル風・風環境評価

構造計画研究所では、長きにわたって蓄積してきた、建築計画・構造設計、流体問題の解析技術をもとに、数値解析による風環境解析コンサルティングサービスを手掛けています。

近年市街地にも大規模かつ複雑な建物が数多く建設されるようになり、周辺環境との調和がますます重要なテーマとなってきました。特に再開発建物では、環境アセスメントの観点から、建設後に周辺の風環境に及ぼす影響(いわゆるビル風問題)を事前検討する必要のあるケースが増加しています。

以下では、ビル風解析コンサルティングサービスについてご紹介します。

ビル風とは

ビル風とは、周辺の建物よりも目立って高い建物や大きな建物が建設されたときに吹くことがある局地的に強い風や乱れた風の総称のことです。


ビル風とは

風環境解析コンサルティング ご利用事例

検討が必要なケース・目的(ご利用例)

  • 環境アセスメント(再開発建物、高層建物、道路高架橋、プラント施設、土木構造物など)
  • 近隣説明
  • 鉄道施設への影響評価
  • 広域山間部での風環境・海沿いなど風が強い地域での防風対策

ビル風の検討方法の比較

ビル風解析は、一般的には風洞実験と数値解析の二種類があります。ここでは、その違いについて説明します。

ビル風評価のための風洞実験

自然風を模した気流中に建物、地形の模型を置き、任意箇所に設置したセンサーで風向・風速を計測する方法です。
イメージを写真で示します。

風洞実験

ビル風評価のための数値解析

コンピュータ上にモデル化した計算格子上での速度や圧力を求めることにより、風環境を予測する方法です。
解析結果を視覚的に表す「ベクトル・コンタ図」の例を下記に示します。

数値解析

風洞実験と数値解析の違い

風洞実験を行う場合と数値解析を行う場合での違いを下記に示します。

風洞実験・数値解析のメリット、デメリット

それぞれメリット・デメリットがあります。
大きな傾向としては、風洞実験は、精度が高いというメリットがありますが、時間と費用がかかるというデメリットがあります。数値解析は、風洞実験に対して精度は劣るというデメリットがあるものの、風洞実験に比べ安価で短期間に様々なケースが試せ、結果が見やすいというメリットがあります。

特定の風向・場所によるビル風の影響を精度よく知りたい場合は、風洞実験を選ぶ、影響が事前に特定しづらい場合は、様々なケースを行える数値解析を選ぶ、といった使い分けをすることがおすすめです。

ビル風解析コンサルティングの流れ

ビル風解析に必要な情報

  • 建設予定地の位置
  • 計画建物の建築図面
    -建物の形状が分かる図面(平面図や立体図)の準備が必要となります。
  • 植栽計画図(※防風対策を検討する場合)
  • 風観測データ
    -建設予定地近くのアメダス観測データ等を使用します。

ビル風解析の具体的な手順


①モデル作成(建設前・後)

新しく建設をする対象地域の建設物の建設前と後の状況をコンピュータ上に再現し、解析モデルを作成します。防風対策の効果を確認したい場合には、防風対策(植栽等)後のモデル作成も可能です。

ビル風解析では、解析対象となる空間をメッシュと呼ばれる小さい空間に分割し、メッシュごとの風速・風向などの時系列の変化を計算します。


計算モデルとメッシュ分割

計算モデルとメッシュ分割


②風観測データの分析

解析用の風向及び風速を、観測データを分析して決定します。

【風向データ】対象地域の風の特性を調べるため、風配を作成します。
以下の図は、通年を通しての風配を表したものです。


通年風配

【風速データ】風環境ランク評価(確率論的評価)を適用するために、風速の発生確率を分析します。


風速の発生確率

③ビル風計算

用途に応じて、下記の計算方法を選択します。

-対象地域の主風向からの風を考慮した計算

-すべての方向からの風を考慮した計算(16風向での計算)


④ビル風の評価

ビル風の評価には、大きく分けて「相対的評価」「絶対的評価」「確率的評価」の3種類の方法があります。
目的に合わせて、3つの評価を使い分けます。

  • 相対的評価:
    建設前・後の風速比で評価する方法です。
    風速分布で評価します。

  • 絶対的評価:
    ビューフォート風力階級等により評価する方法です。
    速度ベクトルと風速分布で評価します。

  • 確率的評価(風工学方式・村上方式):
    風速の発生頻度によって4つの区分に分類し、評価する方法です。
    速度ベクトルと風速分布で評価します。

それぞれの評価方法で、下記のような図を利用し結果を評価します。

風速分布図

風速分布図

風速分布(3次元)

風速分布(3次元)

速度ベクトル+風速分布

速度ベクトル+風速分布


風環境ランク(地点ごと)

風環境ランク(地点ごと)

風環境ランク(コンタ)

風環境ランク(コンタ)


また、確率的評価で用いる評価区分には「風工学方式」「村上方式」があり、それぞれの評価区分は、下記の通りとなります。

  

-風工学方式の評価区分(平均風速ベース):

領域A:住宅地相当

領域B:市街地相当

領域C:事務所街相当

領域D:好ましくない風環境


-村上方式の評価区分(日最大風速ベース):

ランク1:住宅地の商店街、野外レストラン相当

ランク2:住宅街、公園相当

ランク3:事務所街相当

ランク4:ランク3を超える風環境をランク4で表現


⑤報告書作成

用途に応じて、風環境評価報告書を作成します。

  • 自治体への環境影響評価報告書
  • 住民説明会用資料
  • 防風対策検討資料

ビル風解析の詳しい資料がダウンロードできます。
詳細を確認されたい方は、資料ダウンロードに下記のフォームよりお申し込みください。

資料ダウンロードフォーム

関連ページ

関連ソフトウェア