Minitab News Letter 2018/5

IATF16949とは

今年3月のニュースレター「ゲージR&R試験のサンプルサイズと各変動の推定精度について」において、IATF16949という規格について触れました。本規格はISO/TS16949に替わる規格で、今年9月14日にIATF16949に完全移行します。それに伴い、ISO/TS16949の認証が無効になるため、最近弊社のコンサルティング業務の中でもこの件でよくお客様とお話しします。そこで今月のニュースレターでは、この「IATF16949」について紹介します。


IATF16949とは

自動車産業の向けのグローバルな品質マネジメントシステムに関する規格です。簡単に言うと、自動車部品や材料を製造する際にこの手順を守ってくださいというガイドラインが整備されたものです。各サプライヤーがそのガイドラインに沿って設計、製造、承認手続き等を進めることで、部品や材料の品質が一定以上に保持され、またそれらが安定して供給されることにより、組立後の最終製品の不具合やロスを削減することが期待されます。自動車は時に人命に関わる重大事故につながる可能性を有しますので、その構成部品にも高い安全性が求められます。その中においてIATF16949は非常に重要な役割を担います。


因みに、IATFとはInternational Automotive Task Forceの頭文字をとったものであり、欧米の自動車メーカー9社で構成されています。もともとISOが管理していた規格(ISO/TS16949)がこのIATFに移管され、IATF16949という名称になっています。今後もISOからの支援はあるのでしょうが、基本的にはIATFが本規格を管理することになります。



旧規格ISO/TS16949との違い

旧規格ISO/TS16949に比べてIATF16949は要求事項数が多くなり、要求事項が厳しく変更されている点が多くあります。月刊アイソス2017年2月号の特集「IATF16949認証移行パーフェクトガイド」トライザック株式会社編によると、旧規格ISO/TS16949:2009の要求事項は157個であるのに対して、IATF16949についてはその数が281個になっています。またその中には、OEMメーカー共通の要求事項に加え、従来はメーカーが固有に要求していた事項まで取り入れられているため、対応の難易度も高い傾向にあります。ISO/TS16949で認証を受けた会社様においても、従来通りの検証・妥当性確認の方法では認証が通らないという声が挙がっています。他にも、取引先に応じて品質保証の手順を変えなければならないケースが増えるため文書が煩雑になり、その中身の整合性も取れなくなるなどの管理コストも問題となっています。



IATFの変更点の具体例

IATF16949の目的は安全な(不具合のない)自動車を作ることですが、規格の具体例を見てみましょう。ここでは2項目をピックアップして紹介します。


  1. 顧客固有要求事項

IATF16949では新たに「4.3.2 顧客固有要求事項」が追加されました。繰り返しになりますが、従来は顧客固有の要求事項は顧客ごとに発行していたものが、IATF16949ではそれらの要求事項を規格に含むことになりました。その結果、固有要求事項に対してどのような評価を行い、どのような結果が得られたかを審査時に説明しなければならなくなりました。顧客の期待に対して具体的に答える必要があります。
また適応範囲が広くなっている点は影響が大きくなると考えられます。岩波 好夫 『図解 IATF 16949の完全理解 -自動車産業の要求事項からコアツールまで-』によると、以前の適応範囲は、「適応可能なISO9001規格要求事項のすべてを含める」とあるのが、IATF16949では、「支援部門(設計センター、本社、配給センターなど)も適応範囲に含める。」と記載があります。具体的に適応範囲が指定されるため、要求事項に新たに対応しなければならない部門が増える可能性があります。また支援部門が遠隔地の場合も実施しなければならないため、他部門との協力関係の構築が必須になります。


  1. 製品安全

安全な自動車を作ることを目的としているので、製品安全に関する要求事項は大きく変更されています。製品安全に関して13項目に対して文書化するプロセスが追加されました(4.4.1.2 製品安全)。文書化することで製品安全のみならず製造工程の管理にも役立つと考えられますが、全項目に対して文書化を行うのは大変な労力です。



最後に

IATF16949とは?といった話から、影響の大きい変更点を2点紹介しました。旧規格と比べると審査ルールが増えており、規格対応に時間を割く必要があります。また、顧客固有要求事項の様に適応範囲が広くなっているため、従来は関与しなかった組織の協力も必要になる場合があります。IATF16949に合わせて品質保証手順の他、工程を見直し、検証手順の改善を行う会社様もいらっしゃいます。規格対応にかけた労力が形骸化しないよう、本来の目的とする「不具合の未然防止」「品質のばらつき低減」を実現させることを念頭に置いて取り組む必要があると感じています。
次回のニュースレターではもう少し具体的にIATF16949で運用される5つのコアツールを中心に紹介します。特に、Minitabが得意とするSPCやMSAがIATF16949という自動車産業向け規格の中でどのような活躍を期待されているのか、他の産業に属するお客様も是非ご覧いただければ幸いです。


5つのコアツール

  1. APQP: 先行製品品質計画
  2. PPAP: 生産部品承認プロセス
  3. FMEA: 故障モード影響解析
  4. SPC: 統計的工程管理
  5. MSA: 測定システム解析




[ 2018.5.31 Yuya Itoh ]