Minitab News Letter 2018/2

ゲージR&R試験のサンプルサイズと各変動の推定精度について

最近、自動車関連の部品・材料メーカーの方々から測定システム分析(MSA:Measurement System Analysis)に関するお問い合わせを多くいただいています。国際的な品質リスクマネジメントシステム規格 ISO/TS16949からIATF(IATF16949:2016)への移行が今年9月に迫っているためです。特に、MSAの中でもゲージR&R試験に関するお問い合わせが多いです。そこで今月のコラムは、このゲージR&R試験の試験回数と、その結果を分析する手法であるゲージR&R(交差)の精度に関するお話です。


ゲージR&Rって何?

その話に入る前にゲージR&Rで一体何ができるのか、どんな情報が得られるのか理解しておきましょう。以下のスライドが参考になると思いますので、まずはこちらをご覧ください。6ページ目までがその説明になります。


統計解析ソフトMinitab 18によるゲージR&R分析 from KOZO KEIKAKU ENGINEERING Inc., Minitab

一般に、このゲージR&R試験は全米自動車産業協会(AIAG:Automotive Industry Action Group)という自動車産業の非営利団体の発行するガイドラインに従って行われます。ガイドラインには、この測定試験のために部品 10個を測定者 2人 or 3人にそれぞれ測定させ、その1セットを2回 or 3回反復することを推奨しています(AIAG 2003、Raffaldi and Ramsier 2000、Tsai 1988)。つまり、部品数 10個、測定者 3人、反復数 2回で計画された試験の試験回数(サンプルサイズ)は、10 × 3 × 2 = 60回 ということになります。


さて、ここで重要になってくるのがこの推奨サンプルサイズによるゲージR&Rで部品間変動や再現性、繰り返し性を高い精度で推定できるかということです。Montgomery と Runger、またVardeman と VanValkenburg らは、ゲージR&Rで各変動を高精度に推定するにはAIAGの推奨サンプルサイズでは不十分であり、特定のゲージを使用するかどうかを評価する適切な基準にはならない可能性があることを指摘しています(Montgomery and Runger 1993a、1993b、Vardeman and VanValkenburg 1999)。


ここでMinitab社が行った調査の結果をもとに、ゲージR&Rのサンプルサイズと各変動の推定精度の関係を見てみたいと思います(Minitab テクニカルペーパー - アシスタントでのゲージR&R)。(ちなみに、中身を読んでいただくと分かりますが、本コラムはこちらのテクニカルペーパーを参考に作成しています。根気のある方は是非本文を読んでみてください。大変勉強になります。)


1. 部品間変動を推定するための部品数


調査の方法

Minitab社は、指定の試験設定(例えば、部品数 10個、測定者 3人、反復数 2回など)で5,000回の乱数シミュレーションを行いました。毎回、部品の標本標準偏差を推定し、その標本標準偏差と母標準偏差(調査者がシミュレーションする際に指定した真の標準偏差)の比を計算します。つまり、標本標準偏差/母標準偏差 = 1 であれば精度良く予測できたというわけです。こうして計算した5,000個の比を昇順に並べ替え、250番目と4750番目の比の幅を95%信頼区間と定義しました。この90%信頼区間をもとに部品間変動、再現性、繰り返し性を推定するために必要な部品数、測定者数、反復数を求めました。


調査の結果

部品数 10個、測定者数 3人、反復数 2回でシミュレーションすると、90%信頼区間はおおよそ(0.61, 1.37)でした。これは、推定の誤差幅が約35~40%も生じていることを示しています。もう少し噛み砕くと、真の部品間変動の標準偏差が1であるにも関わらず、これを0.61と推定してしまう可能性があるということです。つまり、部品間変動を正確に推定するのには部品数 10個では不十分なのです。仮にこの誤差幅を20%以下に抑えようとすると、ゲージR&R試験では約35個の部品を測定者に測定させる必要があり、また10%以下まで抑えようとすると135個の部品が必要になります。


2. 再現性を推定するための測定者数


調査の方法

再現性も部品間変動と同じように計算できるため、測定者が2~3人のときの再現性の精度も上記と同じになります。


調査の結果

測定者数も2~3人では精度が不十分ということになります。


3. 繰り返し性を推定するための測定値の数


調査の方法

繰り返し性の標本標準偏差と母標準偏差の比はカイ二乗分布に従います。適切な精度で繰り返し性を推定するために必要な測定値の数(試験回数)を求めるために、90%の確率に相当する比の上下限を計算しました。


調査の結果

推奨サンプルサイズ(部品数 10個 × 測定者数 3人 × 反復数 2回 = 計60回)では、誤差の自由度は30となります。この場合、90%信頼区間に基づくと誤差幅 20%以内で繰り返し性を推定できます。つまり、繰り返し性に関しては推奨サンプルサイズで適度な推定精度を実現できます。



まとめ

以上がMinitab社のテクニカルペーパーによる調査結果です。一般には推奨サンプルサイズで試験を実施するケースがほとんどですが、それでは各変動の推定精度が予想以上に低いことがお分かりいただけたと思います。ガイドラインの推奨値はあくまで下限値として記憶しておき、対象とする工程と測定対象の品質特性の重要度に応じて10個以上の部品を集めたり、3名以上の測定者による試験を実施するなどの工夫が必要になります。


[ 2018.3.30 Takeyasu Hirose ]