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大規模地震に対する天井設備の耐震性検討

大規模地震に対する天井設備の耐震性検討

天井落下の現状

経緯

 1978年の伊豆大島近海地震において、躯体には著しい損傷が見られない場合にも、大空間天井の損傷被害が発生したため、天井設備の耐震性が注目され始めました。それ以降の地震発生時にも、同様な天井において被害が発生したため、国土交通省は技術的助言を出し、設計上の注意を喚起していました。平成23年3月11日の東日本太平洋沖地震では、多くの施設で天井の落下、設備機器、消防設備、仕上げ材などで被害が発生しました。震源から離れていたため、直接に地震による躯体の重大な損傷は免れた構造物でも、付帯部分に大きな被害が発生し、以下のような問題が発生しました。

東日本太平洋沖地震で注目された問題

 東日本太平洋沖地震では、以下の問題が発生しました。

  • 人的被害があった。
  • 本来、避難所や防災拠点であるべき施設(体育館、公共施設、防災センター)がその機能を果たせなかった。
  • 建築物の機能が維持できなくなり、復旧までに何か月もの時間を要した。
  • 工場、大型店舗、倉庫などで被害額が甚大となった。
  • 研究機関で、貴重な実験装置やデータが損傷され、被害額が甚大となった。

国土交通省による助言

 国土交通省からは、以下のような助言が出されています。

  • 比較的広い天井面を覆う天井材では、天井面と周囲の壁等との間に、十分なクリアランス(隙間)を設けることが必要である。
  • 天井裏のスペースが大きく、吊ボルトの長さが長くなる等の天井では、吊ボルト相互を補剛材で連結するなどにより、揺れを抑制することが必要である。

天井設備の耐震解析

最近の研究

 近年、静的、動的を問わず実験は広く行われるようになりました。しかし、解析はごくわずかしか行われていません。また、近年の大地震時での天井落下については、かなり詳しく調査されていますが、現象の分析と各現象の原因については、はっきり特定できていません。

 現在採用されている解析モデルには概略以下の2種類があります。

  • 水平の動きに対してのみ検討可能な解析モデル
  • 水平+鉛直動の検討が可能な解析モデル

 現況の建築物一般の耐震検討では、すべてのケースで鉛直動が検討されるわけではありません。さらに、床組中央の面外振動が天井に対する入力動となるので、床組の振動解析を行う必要が生じます。

水平+鉛直動の検討が可能な解析モデルの例

水平+鉛直動の検討が可能な解析モデルの例

耐震対策

 近年の天井構造の耐震対策は、以下の点に着目しています。

  • 耐震クリップの配置
  • V型ブレースの配置
  • ブレースの接合部補強(ブレース留め金具)
  • 天井板や照明の軽量化や設備に対する対策
  • V型ブレースの配置

 一方、フェールセーフの考えから、天井下にネットや膜を張るという案もあります。また、制震天井も提案されていますが、費用の問題もあり、まだ普及には至っていません。

今後の課題

 天井構想の耐震解析について今後の課題を挙げると、以下のようになります。

  • 下振動が卓越する場合の天井の挙動の解明と適切なモデル化
  • 地震の継続時間と多数繰り返しに対する耐力
  • 長周期地震動の影響
  • クリアランスの量と衝突の挙動の解明
  • クリアランスのない天井の耐力確認方法
  • 間仕切壁による拘束の影響
  • 設備機器との衝突有無の判定や衝突回避の確認
  • ダクトや設備機器で吊ボルトやブレース設置が困難な箇所の扱い、耐震性確保の方法
  • 斜め勾配屋根に平行な天井、斜めの吊材の挙動解明と耐震性確保
  • 段差天井の正確な挙動
  • 躯体や天井の偏心、不整形による挙動
  • システム天井(面内剛性がない軽い天井)の挙動の解明、材のすべりに対する考え方(すべりを含めた許容応力を設定するか)
  • 吊りボルトの座屈(座屈後の挙動の解明、座屈を許容するかの判断)

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