ベルシステム24様事例 抗菌薬のPK/PDシミュレーション

PK/PD解析においては実務・研究を問わず、モンテカルロ・シミュレーションが盛んに活用されています

患者における抗菌薬の効果を検討するために薬物動態 (pharmacokinetics, PK) および薬力学 pharmacodynamics, PD) の情報を用いた PK/PD シミュレーションを行います。その際、抗菌薬の種類に応じてAUC/MIC もしくは Time above MIC (T>MIC) をシミュレートします。

MIC の分布は離散データとして与えられます (表 1)。この頻度分布に応じたMICをシミュレーションします。

表1. MICの分布

モンテカルロ・シミュレーションについて詳しくはこちら(リンク)をご覧ください。

AUCは AUC = Dose / CL により算出します。ここでDoseは投与量です。例えば、1000 μg とします。 一方CLは、今回は次の式により算出するものとします:CL = 0.1 x CCR + 2

ここで、CCR は次の方法のいずれかでシミュレーションします。

  • 定数に固定します。例えば、CCR = 80 とします。
  • CCRが正規分布に従うと仮定します。例えば、平均60、標準偏差20といった設定をします。ただしCCR > 0とします。
  • 実際の患者のCCR分布を用います。例えば、患者100人のCCR分布からリサンプリングによりシミュレーションします(今回は省略)。

以上によりシミュレートした AUC と、別途独立にシミュレートした MIC より AUC/MIC を算出します。 シミュレーション回数は例えば10,000 回とします。最後に、AUC/MIC がある閾値(例えば、125)を超える確率を算出します。

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薬物濃度(Conc)がMICを超える時間を算出します。Concは次の式により求めます。

式1. 薬物濃度 Conc を求める

ここで、CL、Vは薬物動態パラメータであり、例えば、CLは「3. AUC/MIC のシミュレーション」と同様の方法で発生させます。 一方、Vは、今回は定数とします (例えば、V = 100)。tは投与後の時間であり、例えば、0 ~ 24 時間とします。また、Tinf = 1 とします。

以上の設定のもと、t = 0 ~ 24 時間において Conc > MIC となる時間を求めます。 例えば、CCR = 80 (従って、CL = 10) の時の濃度推移は図 1 のようになります。 このようにシミュレーションした Conc に対して、別途独立にシミュレートした MIC とを比較し、Conc > MIC となる時間 (Time above MIC, T>MIC) を求めます。 さらに、'T>MIC' / 24 * 100 により %Time>MIC を算出します。このシミュレーションを例えば 10,000 回実施し、%Time>MIC がある閾値 (例えば、50%) を超える確率を算出します。

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図1. 濃度推移の例

「3. AUC/MIC のシミュレーション」の「a. CCR を固定する場合」および「b. 正規分布によるシミュレーション」は Excel のワークシート関数および Crystal Ball のみで実施可能です。一方、「4. T>MIC のシミュレーション」の計算のためには、Conc = MIC となる t を推定する必要がありますが、提示した式の場合、容易には解を求めることができません。従って、Excel のワークシート関数のみでは実施不可能で Visual Basicなど によるプログラミングが必要となります。

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