企業事例
環境評価グループ(EEG)

Crystal Ball を利用した核廃棄物環境評価

お読みいただく前に

いずれも少し古い事例となり、現在も使われているかの保証はありません。しかしながら、Crystal Ballは現在も国内外において、以下と類似する目的でご活用いただいております。広くはリスク分析の企業への適用事例としてご参考になるかと思い、掲載をしております。

Crystal Ball を利用した核廃棄物環境評価

ステデイル・ラッカー氏は、環境評価グループ(EEG)の環境技術者です。EEGは、エネルギー省の廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の技術監督を行う第三者機関として設立されました。

ニューメキシコ州の東南部に位置するWIPPは、軍事関連施設で発生した超ウラン廃棄物を貯蔵する地下施設です。EEGは、WIPPの安全分析レポートの再調査を行うなど、WIPPの様々な活動に対して第三者の立場から技術分析を行っています。

スプリント社は住民ではない顧客にはビジネス用サービスを提供するなどして、顧客の電話パターンにより応じていく必要を感じていました。

レポートは放射性物質を扱う際の全般的な安全事項をまとめたものであり、エネルギー省は核施設に対して、このレポートの提出を義務付けています。 エネルギー省の責務には、安全分析の研究を推進することによって、超ウラン性放射能が空気中に漏れてしまうなどといった事故の可能性を確認する活動も含まれています。

この種の事故には公衆の被爆という重大な危険性が伴うため、エネルギー省は放射能の空中拡散が偶発した場合の最大放射線吸入量の見積もりを行っています。エネルギー省は決定論的な計算手法を採用しているため、様々なハンドブックやガイドブックを参考にして標準的に数値推定を行ってきました。例えば、最悪のシナリオが典型的な施設条件で発生したという単純な想定のみに基づいて最大放射線吸入量の見積もりが行われてきたのです。

しかし、この決定論的モデルでは、廃棄物容器内の放射線予測量や気候条件といった要素を考慮することができませんでした。

当時、Blase氏はCrystal Ball の担当を始めてから比較的日が浅く、ディスカウントキャッシュ・フロー分析などのアプリケーションをまだ数ヶ月しか扱っていないような状態でした。

しかしこの顧客識別の仕事を任された氏はCrystal Ball とモンテカルロ・シミュレーションを使用することで、地域住民のCLEC顧客の電話パターンを予測することができたのです。

このたびエネルギー省が安全分析を完了したということで、ラッカー氏とEEGは潜在的な放射能洩れの影響に関する研究結果を再検討することにしました。潜在的なリスク要因の全てが考慮されていることを確認するため、ラッカー氏らは国際放射能防護委員会(ICRP)で義務付けられている補完的な確率論的分析を実施しました。(詳細については、ICRP-64、「潜在的な放射線接触からの防護:概念的フレームワーク」、国際放射能防護委員会著、1994年を参照。)

放射線吸入量の確率論的評価法を用いれば、決定論的モデルでは不可能だった、複数の独立したシナリオを考慮する作業が可能になるのです。決定論的モデルでは1つの値しか入力できない媒介変数であったものが、確率分析を用いれば状況範囲内の有意な変動を表す確率分布となります。このようにして、これらの媒介変数を任意にサンプリングし、現実に起こりうるような事故シナリオのシミュレーションをすることが可能になるのです。

この確率モデルを適用する際、ラッカー氏はCrystal Ball とモンテカルロシミュレーションを活用し、ランダムサンプリングを利用したモデルを構築しました。このモデルでは、土地特有の気候条件や、廃棄物容器内の放射線源の変化量も、確率的変数(Crystal Ball においては「推定値」)として扱われます。

ラッカー氏は1万回におよぶシミュレーションを実行し、予測吸収値をプロットすることにより、95%、50%、5%といった吸入可能性を示すことに成功しました。そして95%の吸入可能性では、エネルギー省の決定論的モデルが導き出した放射線吸入量は、確率モデルのそれよりも高くなってしまい、従ってより保守的な値を導いていることが明らかになったのです。

これは決定論モデルが、確率分布における高い値と低い値を不明瞭に取り扱っていることに起因しているのです。エネルギー省の評価が保守的であるということは、危険性が過大に見積もられていた可能性を示唆しており、事故による高度の放射線の発生は考えられていたよりも起こりにくいことが分かったのです。

Crystal Ball による分析はまた、複数の廃棄物容器関連の事故を分析する際に、決定論的モデルが潜在的な弱点を抱えていることを明らかにしました。事故時の放射線源を見積もる標準方式においては、1つの容器のみが80Ci(Curie)という管理上の限界値まで一杯に詰められており、他は全て8Ciまでしか容器が埋まっていないことが仮定されます。

もちろん容器が1つしかなく、それが平均80Ciまで詰められていると見積もることもしばしばあるのですが、大部分の事故では1つではなく複数の容器を用いているのが現状です。

こうした状況下で、個々の容器の放射線源値を検討する場合、確率モデルよりも決定論的モデルにおける値の方が低くなってしまうのです。EEGはこのような発見を基にした上で、エネルギー省に対して、決定論的に導かれた放射線吸入量を評価する際には、放射線源上限値の再評価をすることが必要である、と提案することができました。

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