モンテカルロ・シミュレーションとは

ビジネスにおけるリスク分析の基本的な手法を、なるべく簡単な言葉で解説していきます。最後には企業での実施事例をご紹介しております。

自由なサイコロとは?値はなんでもよい?

モンテカルロ・シミュレーションとは「自由なサイコロをいくつも作って、何回も投げること」です。

「サイコロは1~6までの値が出る6面の立方体じゃないの?」と思われるかもしれません。 もしくは、近年バラエティ番組でよく見かける20面のサイコロも考えられます。

もし自由に面の数や出現する値をいじることができたらどうでしょうか? 例えば、レストランを経営している人が、
 ・その日の来客数を占ってくれる
 ・そのお客さんの平均支払額を教えてくれる
という2つのサイコロを持ってれば、オープン前にその2つの「自由なサイコロ」を投げて その日のおおよその売上を占うことができます。

このレストランの経営者がやっていることが、「モンテカルロ・シミュレーション」そのものです。 その日の来客数を占ってくれるサイコロとそのお客さんの平均支払額を教えてくれるサイコロを、 1回だけでなく100回投げれば、100日分の売上を占ってくれます。

モンテカルロシミュレーション用のサイコロの絵

モンテカルロ・シミュレーションで「明日」や「1年間」を次々と生み出す

レストランの明日の売上以外にも、世の中には簡単には予測できないこと数多く存在します。 企業の翌年1年間の売上や経費、翌日の株価、商品が売れる個数、1分間にかかって来る電話の回数など、 身の回りのことを考えると簡単に思いつくことができるかと思います。

確かに、ピタリとその値を当てることはほぼ不可能ですが、 「なんとなくこんなことが起こりそう」であれば、誰でも考えることができます。 ただし、大雑把すぎると誰もその予測を信頼してくれません。

そこで、先ほどのレストランの例のように、サイコロが明日を占ってくれる状況はどうでしょうか。「サイコロを100回投げた結果から、平均的にこんなことが起こりそうです」であれば、 少しは説得力が上がるかもしれません。

なぜなら、サイコロを100回投げた=100日分営業したと言えるからです。 仮想的に100日営業した結果から予測をすれば、ピタリと当たらないまでも説得力があります。

サイコロを表す図形、確率分布という考え方

レストランの「その日の来客数を占ってくれる」サイコロは、 1~6までの値が出現する一般的なサイコロではなく、 いろいろな来客数が面に書かれているサイコロでなければなりません。

さらに、これまでの経験で「だいたいこれくらいの来客数だろう」ということがわかっているとすれば、 その値に近い値(サイコロの目)はなるべく多く出る、反対にそこから外れた値は少なく出る、 というようになっていないと現実から離れたサイコロを振っていることになってしまいます。

つまり適当にサイコロを作ればいいわけではなく、 起こりやすい値・数値やその範囲を決めてサイコロを作る必要があります。

そこで、起こりやすい値・数値やその範囲を図形を用いて決めてあげます。 例えば図のような三角形であれば、高さが高い値の出現頻度を高く、 反対に高さが低い値の出現頻度が低いサイコロを表すことにします。 また、左端と右端の値はサイコロの目の最小・最大とみなすことにします。

このサイコロの値と起こりやすさを決める図形のことを確率分布と呼びます。 確率分布は三角形(三角分布)や長方形(一様分布)以外にも、釣り鐘型(正規分布)をはじめ様々な分布が存在します。

サイコロの目の範囲と起こりやすさ(確率分布)

サイコロを「作って投げる」はコンピュータに任せる(モンテカルロ・シミュレーションの実施)

以上より、未来を生み出してくれるサイコロを作り何回も投げることで、おおよその予測ができることがわかりました。 ただし、いざ実践しようとするといくつか問題が出てきます。例えば、

  • どうやって自由なサイコロを用意するか
    (図形とサイコロをリンクさせるか)
  • どうやって何回もサイコロを振るか
    (さすがに10000回も投げるのは・・・)

という点が挙げられます。

「できれば簡単にやりたい」。まさに皆様の声だと思いますが、これをExcel上で可能にしたソフトウェアが「Crystal Ball」です。 「Crystal Ball」を用いると、Excelのセル1つ1つを「自由なサイコロ」として機能させることができます。 また「サイコロを振って未来をたくさん出現させる」といったことも簡単に行うことができます。

Excelを用いて、いろいろな数値計算を行っている方は多いと思いますが、 シナリオを変えるたびに値を手で書き換えるのはとても面倒です。 その作業が「サイコロを振るように」「何回も作ることができる」状態になれば・・・ とはいえ、モンテカルロ・シミュレーションは実際のところどのように活用されているのでしょうか?

ビジネスにおけるリスクを取り扱う、事業リスク分析

活用例として、事業リスク分析が挙げられます。事業性評価や需要予測、売上予測、投資効果の予測、マーケティング関連の分析によく使われています。

モンテカルロ・シミュレーションには、分からないもの・決められていないものをそのままに扱えるというメリットがあります。 例えば、売上や成長率、為替、競合の動き、業界成長率、製品スペックの想定などです。さらに、これらの影響をまとめて確認して、何が重要な因子になっているのかを特定できるというのもポイントです。

ビジネスを取り巻く環境は不確実なものである一方、事業戦略を検討する企画系、製品戦略系、営業マーケ系、管理系などの業種で多く活用されます。 活用目的として、自部門/製品サービス/全社の計画策定・中期経営計画などに載せる業績報告等や、新規事業、研究開発投資、設備投資、ポートフォリオ管理などが多く挙げられます。

モンテカルロ・シミュレーションを活用しての検討が可能となる業界に制限はありませんが、 メーカー/重工業、製薬/ヘルスケア、資源/インフラ、監査法人/会計事務所、飲料・食品、消費財、保険・再保険、不動産、金融機関、教育(MBA, MOT)…などで特に多く活用されています。

弊社では30年来のCrystal Ball 販売を通じて、上記のような業界における特徴的な利活用方法を拝見して参りました。 その一部を本ページ下部の資料としてまとめております。ぜひ下記よりダウンロードしてお役立てください。

ビジネスリスク分析でぶれ幅を確認(3点法とモンテカルロ・シミュレーションの違い)

ヒューレット・パッカード社におけるモンテカルロ・シミュレーション(Crystal Ball)の活用事例

最後にひとつ、モンテカルロ・シミュレーションがビジネスの現場でどのように活用されているか、事例をご紹介します。

ヒューレット・パッカード社の市場調査部で勤務するマイケル・ハート氏は、同社の製品マーケティングのスペシャリストです。 ハート氏はマーケティングを補助する目的で、Crystal Ball を過去7年以上に渡って利用してきました。

彼の扱う調査は、同社のプリンターに関連したもので、需要予測や新製品の市場への投入、さらに生産ライン拡張に関する意思決定に関するものが中心です。 ハート氏は、同社の市場調査とビジネス判断をより確かなものにするため、Crystal Ballを新たに利用し始めました。

新製品の売り出しや現在の生産ラインの拡張を考慮する際、それらのおおまかな実現可能性を理解するために、通常まず市場調査や製品テストが実施されます。 これらのリサーチは大変重要です。潜在的な市場シェアや販売規模、望ましい生産特性、市場の細分化、 そして製品の使用パターンといった諸要素を調査を通じて、将来的な製品パフォーマンスの予測していきます。

ハート氏はこのリサーチデータに基づいて、Crystal Ball の分布適合機能を活用して確率分布を作成し、モンテカルロ・シミュレーションを実施しました。 これにより、同社が取り扱っている製品同士の共食いの可能性や、市場参入のための最適な価格設定について、確率的な参考値を得ることができました。

感度分析を活用してROIに影響を与える因子を特定、モンテカルロ・シミュレーションとセットで実施

ハート氏は、Crystal Ball を活用することによって、期待される利益や投資収益率(ROI)といった重要な財務情報の予測も行いました。モンテカルロ・シミュレーションにより、信頼度95%という幅を持った予測を実施しました。

また、モンテカルロ・シミュレーションとセットで実施される「感度分析」を活用することで、戦略検討上の重要な視点を得ることが可能になりました。

まずは相関の設定を活用して、互いに影響を及ぼし合う変数について、関係性を設定しました。その上で、ROIなどのKPIをモンテカルロ・シミュレーションで算出したあと、感度分析を実施しました。これにより、ROIに与える影響が大きい要因を洗い出して、予測で用いる各変数の影響を視覚化し、数量化を行いました。これらにより、追加的な市場調査を効率的に実施することが可能になりました。

Crystal Ball はヒューレット・パッカード社の世界的メーカーという地位を守り、 仕入先から価値のあるパートナーとしての信頼を獲得することに貢献しました。

モンテカルロ・シミュレーションにはビジネスを改善する力があります。 各業界における事例をもっと知りたいという方は、ぜひ下記より資料をダウンロードをしてお役立ていただければと思います。

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